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    volume 14464
  • ニッポンの原風景がここにある! 80棟の茅葺き民家が残る羽後町へ
    ニッポンの原風景がここにある! 80棟の茅葺き民家が残る羽後町へ
    秋田県雄勝郡羽後町
  • 山内貴範

    秋田県羽後町って知っていますか? 東北地方、秋田県の南部に位置し、“出羽の富士”と呼ばれる鳥海山を望むのどかな町です。人口は約15,000人、町内の7~8割が山林という田舎町です。名物は、“日本三大盆踊り”の一つに数えられ、重要無形民俗文化財に指定されている「西馬音内盆踊り」。毎年8月のお盆の時期、3日間に渡り開催され、このときは約10万人もの観光客が小さな町に訪れます。布の切れ端を縫い合わせた“端縫い”という衣装を纏い、顔を編笠で隠して踊る姿は、妖艶そのものです。

  • 山内貴範

    そんな豊かな文化が残る羽後町、どうやって向かえばいいのでしょう? まず、東京駅から秋田新幹線に乗って大曲駅まで約3時間40分、さらに奥羽本線に乗り換えて湯沢駅まで約40分。羽後町内には鉄道が走っていませんので、湯沢駅からレンタカーを借りていかなければいけません。バス便もあるのですが、本数が少ないのでやはりクルマの利用が便利です。「よし! 羽後町へ行こう!」と思い立ってすぐ行けるような距離ではありません…

  • 山内貴範

    交通手段は決して便利とはいえない羽後町ですが、そのぶん、都会で味わえない魅惑の風景を楽しむことができるので、時間をかけてでも行く価値は充分にあります。例えば、羽後町は東北地方でもっとも茅葺き民家が残っている町。総数はなんと約80棟といわれています。黄金色の稲穂の向こうに佇む茅葺き民家。昔話に登場するような光景は、私たちが思い描く田舎のイメージそのもので、写真撮影に訪れる人が後を絶たないそうです。

  • 山内貴範

    というわけで、これから何回かに分けて、羽後町の観光スポットを紹介していきたいと思いますので、どうぞお付き合いください。まず、取材陣一行が向かったのは重要文化財の茅葺き民家「鈴木家住宅」です。湯沢駅からクルマで約30~40分ほど、山間の飯沢という地域にあります。築350年とも、400年ともいわれ、東北地方でも一、二を争う古さを誇り、その佇まいには長年の風雪に耐えてきた風格が感じられます。

  • 山内貴範

    鈴木家がすごいのは、なんと民家として普通に使われていることです。第46代目当主の鈴木杢之助重廣さんと、奥さん、子どもたちが楽しく生活している生活の場なのです。博物館や資料館にある民家は人が住まなくなってしまったものが多いのですが、鈴木家はバリバリの現役。鈴木さんは毎日、囲炉裏で薪を燃やして、来客をあたたかく迎えてくれます。家のなかを探検させていただくと、トイレは最新式ですし、もちろん冷蔵庫も現代的なキッチンもあります。新旧の暮らしが共存しているのが鈴木家の最大の魅力なのです。

  • 山内貴範

    鈴木家には天井がないので、屋根裏や梁を見ることができます。取材時は夏の暑い日だったのですが、板戸を空けると風が通り抜けて快適そのもの。「夏でもクーラーが不要ですよ」と鈴木さん。田舎暮らしってステキ! なんてロハスな暮らしなのでしょう。そう思っていたら鈴木さんが、こう一言。「この地域一帯は、冬になると雪が2m以上積もる豪雪地帯ですから、冬はとんでもなく寒いですよ。なにしろ、家のなかなのに気温が氷点下になることもザラですから」 茅葺き民家で生活するって、大変なんですね…

  • 山内貴範

    鈴木家のスゴイところは、“開かずの間”があるということ。お盆の時期しか開けない「バケモノザシキ」と呼ばれる部屋のなかには、神棚が祀られているのだとか。その名の通り、本当にお化けが出るんでしょうか…? 「私はあまり霊感がありませんが、何かがいると感じた人もこれまでに何人かいましたよ。いずれにせよ、開けないのが身のためですね(笑)」 好奇心はあるのですが、そこまで言われたら怖いので、遠慮します~!

  • 山内貴範

    「羽後町には素晴らしい建築の宝庫です」と、話す鈴木さん。教えていただいたスポットへ向かうことにしましょう。鈴木家からクルマで真坂峠という峠道を上り、約20分の田代集落へ。民宿、「かやぶき山荘 格山」に到着です。明治時代に建てられた茅葺き民家に泊まることができ、さらには定期的に手打ちそばが振舞われるイベントが開催されるとあって、人気急上昇中のスポットです。

  • 山内貴範

    取材陣を笑顔で迎えてくれたのが、オーナーの阿部久夫さん、雄太さんです。雄太さんのお子さんたちと一緒に、軽トラックに乗って記念撮影! それにしても軽トラと茅葺き民家って、田舎の風景によく合いますね。久夫さんは、この向かいに建つ「旧長谷山邸」のなかに、「鎌鼬の里美術館」なる施設を作ろうと奮闘しているのだそうです。いったいそれはどんなものなのでしょう! 気になります!

  • 山内貴範

    久夫さんの案内で、向かいに建つ「旧長谷山邸」を見学してみましょう。明治15年に完成した主屋と、明治35年に完成した3階建ての楼閣が並んでいます。家主の長谷山さんはこの地域を代表する大庄屋で、かつて参議院議員も務めたといいます。「羽後町には峠道が4本あるのですが、七曲峠という峠は長谷山邸に通じる道として整備されたものなんですよ」と、久夫さん。自分の家のために道を作ってしまうなんて、昔のお金持ちってスケールが大きすぎますね…!

  • 山内貴範

    多くの来客を迎えたであろう「長谷山邸」の居間は、柱や梁に漆を塗った豪華な造り。何と専用の電話ボックスまであるんです!「電話番号は3番。1番は役場などでしたから、長谷山さんがこの地域の有力者だったことがわかりますね」と、久夫さん。ヒルズ族をはるかに凌ぐ裕福な暮らしぶりに圧倒されたところで、「鎌鼬の里美術館」の話をうかがうといたしましょうか。

  • 山内貴範

    「今から51年前、日本を代表する写真家である細江英公氏が、舞踏家の土方巽とともに田代を舞台に写真を撮影したことがあるのです。その写真は『鎌鼬』という本にして出版され、世界的なベストセラーになりました。その素晴らしさを知ってもらうべく、長谷山邸の蔵のなかに造ろうとしているのが『鎌鼬の里美術館』なのです」 写真は細江氏が田代地区で撮影した一枚で、なかなかアバンギャルドな写真です。美術館は10月22日にオープン予定で、現在は準備の真っ只中。待ち遠しいですね。

  • 山内貴範

    「細江氏の写真に写っていますが、この地域では昔ながらの稲の乾燥方法である“はさがけ”という農法が今も営まれています」と、久夫さん。細江氏の写真には“はさがけ”が写っているものが多く、その風景に魅せられ、シャッターを押し続けたといいます。一般的に、稲は機械を使って乾燥させるのですが、自然乾燥は米の旨みが増し、よりおいしいお米になるのだとか。「長谷山邸」からクルマで移動していると、稲刈りと“はさがけ”の準備をしている家族を発見! さっそく声をかけてみました。「こんにちは~」

  • 山内貴範

    稲刈りでお忙しいなか、気さくに取材に応じてくれたのは、この地で代々農家を営んでいる小坂圭助さん。息子さん、お孫さんと一緒に、1年の稲作の“総決算”に勤しんでいました。田んぼを背景に笑顔がまぶしいです!

  • 山内貴範

    圭助さんと息子の尚之さんは、刈り取った稲を束ねて、丸木で組んだ竿にかけていきます。これが“はさがけ”です。「機械を使うよりも遥かに手間がかかりますが、“はさがけ”で天日干しをしたお米は、おかずなしで箸が進むほどおいしさが引き立つのです。皆さんに味わっていただきたいと思い、ゆくゆくは、特産品として売り出すことができればいいなと思っています」と、笑顔で語る尚之さん。なんだか、お話を聞いているだけでヨダレが…! “はさがけ米”、ぜひ食べてみたいですね!

  • 山内貴範

    田んぼは子どもたちの格好の遊びの場。畦道を駆け回ったり、“はさがけ”の柱に上ったりと、取材中も笑い声が響いていました。都会生活に疲れきっている取材陣も、心が和みます。秋田の子どもたちといえば、全国の学力テストで上位の常連。豊かな自然のなかでイキイキと遊ぶことができることも、子どもたちにプラスの効果があるのかもしれませんね。

  • 山内貴範

    別れ際に圭助さんが言いました。「羽後町には今年の7月、『道の駅 うご』がオープンしたばかり。地域の名産品が盛りだくさんですので、ぜひ寄っていってください」 なんと、圭助さんは今年オープンしたばかりの「道の駅 うご」の駅長さんなのです! 駅長直々のおすすめというわけで、これはもう、行くしかありません。羽後町の魅力がギュッと詰まった道の駅、果たしてどんなところなのでしょうか??

INFORMATION

PLACE秋田県雄勝郡羽後町

秋田県雄勝郡羽後町
住所: 秋田県雄勝郡羽後町
HP: https://www.town.ugo.lg.jp
備考:

国指定重要文化財 鈴木家住宅
住所:秋田県雄勝郡羽後町飯沢字先達沢52
営業時間:9時~17時。バケモノザシキの一般公開は毎年8月13日~15日。
定休日:居住しているため、平日は要問合せ。
TEL:0183-68-2913
HP:http://www.suzukike46daime.jp/
料金:500円
※12月~3月は極めて寒いため、充分な防寒対策を行ったうえでお出かけください。


かやぶき山荘 格山
住所:秋田県雄勝郡羽後町田代字梺61
営業時間:チェックイン15時、チェックアウト11時。
TEL:0183-62-5009(書店ミケーネ内)
HP:http://kakuzan.ugotown.com/
料金:宿泊は1棟借し。素泊まり13,000円~。食事付きプランは応相談。


2016年11月16日配信

PERSON山内貴範

山内貴範
わずか20年ほど前までには、約200棟以上の茅葺き民家があったという羽後町。現在、その数は減少してしまいましたが、こうした貴重な文化財を残そうという動きが進んでいることがとてもよくわかりました。「鎌鼬美術館」はその第一歩。足を運んだ多くの人が羽後町の豊かな自然に心動かされることでしょう!